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かまぼこ工場の隣にある駐車場兼資材置き場で下校中に発見したエロ本を読んでたらマントを羽織った女子高生に催眠術を教えてもらえることになった。
事実だけをまとめたのに非常にファンタジーになってしまったけど、「事実は小説よりも奇なり」と言うし問題は無いだろう。重要なのは僕が催眠術を使えるようになるって事だけだ。あと、師匠になる女子高生こと紀野フミカが黒髪の美少女だという事も注目しても良いかもしれない。
若いうちからエロ本なんかに頼ったらダメだ、とか言うクセに僕のエロ本を自分の鞄に仕舞い込むエロ師匠の催眠術レッスンには想像するだけでチ○コが痛くなるほど興奮する。エロ本見る暇があれば、その時間をクラスメイトを犯すのに使うのが催眠術師だ、とか素敵未来を語りつつ思い出し笑いをする師匠の唇はプリプリの薄紅色で、でも端からヨダレがたれてるのは何だなぁ、とか思うが十分エロイので教えない。
まあ、ともかく催眠術を覚えればエロイ事がヤリ放題ということなので非常に楽しみだ。
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「寝てるわね」
「寝てますね」
僕と師匠の視線の先にはクラス一の美少女と評判の伊達マキが僕のベッドで寝ている。すーすー、と可愛らしい寝息にほんわか気分になる。
「みぎゃっ」
が、師匠のチョップでヘタレたエロ魂が覚める。しかし流石は伊達、一時的とはいえ僕のエロ心を凌駕するイノセントでコケティッシュな寝顔を作り出すとは...美少女、侮れないな。
「モトキ!オマエは真面目にこの子猫ちゃんにエロエロする気あるの?寝かせてどうするのよ、寝かせて」
美しいお顔を曇らせてまで睨みを利かせる師匠。わざわざ腰をかがめ上目使いで覗き込んでくる姿はメガネが似合いそうだ。メガネっ娘の師匠、叱られるのが楽しみになりそうな威力があるな、想像だけでも。
「オイ、何を考えていやがる」
「いや、僕も寝かせるつもりは全然無かったんですけど」
声が一段低くなる師匠に言い訳をする僕。
「これじゃ突っ込んだらギャーッとなって警察呼ばれちゃうじゃない。私たちはレイパーじゃなくて催眠術師、和姦が基本のエロの使者なの。催眠じゃなくて睡眠させてどうすんのよ、もう」
腰に手を当てて息を吐く師匠。いまだ僕を見る目は冷たい。
「ここは一度伊達を起こして、先日の女子高生の時と同じように師匠にお手本というか模範演技をひとつ御願い出来れば...」
顔の前で手を合わせてお願いをする。ちょっとタメが長い。不安になって目を少し明けたとき、ようやくのお答え。
「まったく、ボケ弟子がぁ...しょうがないわね。何度も言うけど私は暇じゃないのよ、女子高生のスケジュールは分刻みで小学生の起床朝食学校夕食就寝みたいな単純生活じゃないの。呼ばれても助けに来てあげられない事もあるんだからね」
と言っても携帯に掛けると必ずワンコールで出る師匠は結構甘甘だ。今日だってこうやって来てくれたし、週末の泊りがけのレッスンとか面倒見が良い。エロくて綺麗で世話好きな師匠は、口や視線ほど僕を嫌ってないと思う。
「おいコラ、分かってるのか」
ふにっと鼻先を抓まれる。地味に痛い。
「ありがほうございまう」
優しく美しい師匠に感謝の意を表する。他意は一切無い、鼻は痛いけど。
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「お嬢ちゃん起きて起きて。催眠術の時間だよ、早くしないと悪戯しちゃうゾ」
伊達のほっぺたをペチペチ叩きながらろくでも無いことを呟く師匠。もっとも、そのろくでも無いことをしようとしているのは僕も同じなんだけど、って言うか僕がろくでも無い事をしようと思って伊達を連れ込んだのだが、それにしてもである。
だいたい、その言い方だと起きても起きなくても伊達は悪戯される事になる。選択肢を提示しておいて実質一択の偽分岐はユーザーの不快値を上げるだけなので止めてもらいたい。開発者のオナニーに付き合わされる身にもなってみろ、と言いたい。何処の何とは言わないが。
「おぉーい、子猫ちゃーん。起きろーい、寝坊スケちゃんには露出趣味を追加しちゃうぞー」
ちょっと、師匠の声にあせりの色が見える。ペチペチの打撃音がパチパチに変わっても伊達は起きない。しかも、叩かれてるのに寝顔は穏やかなままだ。これはアレか、そう眠り姫、伊達はガラスの靴伝説の美女の末裔で神から禁じられた一口食べたら三年は起きないという毒りんごの呪いを昔話的に受け継いで、って痛い。
「いろいろ混ざってるし、間違ってる。だいたい三年起きないって何よ、どこのネズミーアニメで使われてる設定よ」
「僕も良く知らないんですが桃○郎伝説でそんな話があった気がするんですが、って痛い」
向う脛へのつま先蹴り二発で僕はうずくまる。巡航ミサイル並みの正確さで同じ場所を先のつま先の小さいヒールで蹴り付ける師匠は天才であると同時に鬼である。赤く腫れてる、きっと内出血だ。
「桃○って何よ、○伝って。年考えてせめて○鉄とか言えないの、ってそもそも寝太郎カードなんてあるの?って何よ、ゲームの話とか馬鹿にしてるの?だいたい、この子が起きないのはモトキの掛けた催眠がおかしいからに決まってるでしょうが。何、人の所為にしようとしてるのオマエ」
師匠は日本人には珍しく、ボディーランゲージを多用する人なので動きを見るのは面白い。が、強調時に使用する『指差し』はかなりの頻度で対象に突き刺さるので注意が必要だ。今回の流れでも避ける事が出来ずに4回ほど額を突かれた。
「え、僕の催眠術って効いてるんですか。あと、関係無いですけど桃○はさくまの誇る名作ゲームですよ、どこかのオホーツクでディスクなシステムとは違うんで、って痛いってッツゥー」
脛を擦っていた右手の甲にサクッて、痛がった隙に三度脛に突き刺さる師匠のつま先。涙の向こうに見える恐るべき凶器、それはただの振り子運動だと言わんばかりに未だ揺れる師匠の右足。だいたいなんで僕の部屋で土足なんだ、綺麗な脚しやがって畜生ッ凄く痛い。
「クソゲーとかレトロゲーなんてどうでも良いのよ。オマエのクソ催眠がこの子を眠らせてるんだよ、ったく、見習いのクセにとんでもないレベルで眠りの指示なんかしてくれやがって。この子はいま、意識下で眠っていると思い込んでいる状況よ、解かる?彼女は寝てると思ってるから私の声を、催眠を“効いてくれない”の」
え、何それ。師匠でも駄目なの?眠ってると思い込んでるってどんな状況ですかソレ。
「じゃあ、どうすれば良いんですか」
「知らないわ」
シレっと、さも当たり前かの様に僕を突き放す師匠。そして、おもむろに携帯を胸元から取り出していじり始める。これはまさに私の仕事は終わったわ、と言わんばかりの態度。どこにでも居そうな凡百の女子高生みたいなその仕草、その姿、そのつれなさに不安が募ってくる。
「え、ちょっと師匠、知らないわってそんな無慈悲な事言わないで」
「知らないものは知らないわよ、私でも。眠るふりに飽きたら起きるんじゃない、多分」
「飽きたらとか、多分とかそんな適当な、って痛い」
すがり付く僕に応える師匠のセリフが棒読み。しかも四度目の脛蹴り。痛さのあまりに泣きが入る。
「黙れこわっぱ。だいたいオマエのしでかした不始末だろが、自分で何とかしてみろ」
キレやがった、諦めやがった、もはや他人事。助けに来たはずなのに説教に変わってる。くそっ、美人じゃなかったら腹パンチしてやるのにへそ出し女子高生め。こんな師匠の美しいおなかを見ても脛の激痛と胸の軋みが治まらない今日の僕は非常に弱っている。うっ、涙が出てくる主に痛さで。
「師匠にも無理なこと出来るわけ無いじゃないですかぁ」
「無理じゃない、分からないだけ」
なんだそれ。ここまで酷い自己肯定ははじめて聞いた。女子高生が小学生みたいなこと言いやがって。分からないだけなら分かるまでやってくれよ、助けて師匠。脛は内出血でプニプニ膨らんでる、、もちろん痛いし涙が止まらない。
「ん、もう。この子の目が覚めて面倒臭い事が起きたら携帯に連絡頂戴。その時、改めて催眠を掛けてあげるわ」
涙目での哀願攻撃で多少は譲歩を引き出せた感じがする。しかし本当に痛い、折れてないよねまさか。
「でも、起きなかったら...」
問題はココだ、師匠さえ匙を投げた伊達の眠りに終わりがあるのか見当も付かない。
「起きる起きる起きる。絶対、起きる。だからモトキはこの子が起きるまでエロイ事してなさい」
エ、エロ?
「エロイ事していいの?」
「ガンガンしなさい、元々その為に催眠掛けたんでしょ。まあ、睡眠になっちゃたけど」
最後の一言は何気に傷付いたけど、本当にいいんですかエロイ事。和姦主義を自称するエロの使者が、寝ている美少女を一方的にガッツンガッツンしちゃって良いんですか、そうですか。
「遥か童話の昔から、美女は王子のキスで目覚めモノ。眠れる美少女を見つけたらエロエロ出来るのは男の特権よ。モトキ、この不埒にもオマエの部屋で誘い受け中のスリーピングプリティーに熱い滾りを注ぎ込みなさい」
途中で理論の跳躍があった気がするがその通り。PTA推奨、パパママにっこり、お子様も大好きなネズミーアニメでも良く見られる世界の法則・宇宙の真理の天の声。師匠の言うエロイ事に間違いはあまり無い。
「わかりました、師匠。これから人のベッドでスヤスヤ寝ている伊達マキにエロイ事を、僕の熱いパトスを打ち込みます」
ベッドの脇からこぼれた伊達の柔らかく長い髪を指に巻きつけ、その感触を楽しみつつ師匠に誓う。
「そうだ、オマエの獲物に社会の厳しさを、エロの心を流し込むのよ」
「流し込みます」
中出しは基本。師匠に手取り足取り教えられたエロの心、名も知れぬ女子高生さんの献身による実地研修で学んだ技を全力で伊達にぶつけて見せよう。アレはとても和姦には見えなかったけど、伊達に応用出来る事もその分多いだろうし。
「よし、ガンガン逝け。怯まず逝け。情け容赦もかなぐり捨てて、孕ます気概で敵を討て」
「イエス・マム」
勢い調子に乗って敬礼をする僕の横を通り抜け、部屋を出て行く師匠が戸口でピタリと立ち止まり、振り向き様に追加の注意を一言。
「起きたらちゃんと私の携帯に連絡入れろよ、メールじゃなくて電話でね。ああ、あと録画忘れずに」
師匠の指差す先には三脚に備え付けられたビデオカメラ。しかも2台。さらによく見ればベッドの正面や棚の上にもセッティングされている。何時の間に仕掛けたんだ、この人。
「手前のハンディカムはハメ撮りとかアップとか臨機応変に使いなさいよ」
そう言うと、一度もビデオを扱ったことの無い僕にかなり難しい注文を残して師匠は颯爽と階段を駆け降りていった。すぐさま下でガタンッ、と戸の閉まる音とカチャリと鍵の閉まる音が続いた後、重々しいまでの静寂が部屋に充満する。師匠は行ってしまった。これから伊達が起きるまで、僕の部屋はエロエロ空間のエロの楽園エロトピアとなるのだ。さっきまでのハラハラが、今はドキドキのワクワクに変わっている。
先ずは服を脱いで深呼吸、そして忘れずにビデオの録画ボタンを押さなければ。なんと5台もあるのか、エロエロだな師匠。
以下鋭意製作中(完成未定)
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