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へヴィでチェーンな店員の妄想雑記帳(18未満非推奨)
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    ベースになっているお話しとかゲームはありません。ウソ名前にウソ町のウソ世界です。今回もまだエロスグロスはありません。

    副題 このパターンを続けるのは結構ムズカシイ
    1
     
     この日、テツロウがカナコを見たのは二回目だった。始めて見た時と同じく砂埃にまみれ汚れたベージュのワンピースに紺のレギンスを穿いた裸足の少女。橙色のベリーショートは所々土が付いて面白い文様を作っている。磨けば光るな、と思いつつも踏ん切りがつかない。額の印がテツロウの外道を押さえてしまう。
     
    アツモリ=クロイ
     
    テツロウの心に刻まれた唯一の勇者の名前。十二年前、丁度このタチガレの街で出会った少年はもういない。テツロウの勇者は「勇者システム」に殺されたのだ。
    すこし昔を思い出して鬱になったテツロウは目を強く結び、瞳の渇きを取り除く。改めてカナコを如何しようかと視線を向けるが姿が見えなくなっていた。
    カナコの額の勇者の印はこの街で都合の良いものではない。ましてや冒険者ギルドで勇者と名乗ったカナコにこの街での安全は無い。テツロウ自身もカナコを五体満足でこの街から出してやる気はさらさら無かったが、他の冒険者においそれと呉れてやろうとは思いもしない。

     
    勇者は金になる、と言っても「金になる」と「勇者」の間には特別な関係は無い。「勇者」でなくても「農民」や「町人」でも問題は無い。ただ、冒険者ギルドに来る勇者はレベルの低い独り者という看板を掲げているので捕まえやすいのだ。大手を振って奴隷狩り、小遣い稼ぎが出来るチャンスを求める冒険者が場末の冒険者ギルドには溢れている。魔族討伐の依頼をこなすよりも安全且つ実入りが良いのだ。モノによっては役得も大いにある。世界が勇者にとって優しい顔を見せる事はあまり無い。
     
     本来、「冒険者ギルド」は対魔族の切り札である「勇者」を支援する為にマホロバ王国連合が作り上げた人材供給システムであったのだが、勇者の劣化が進むに連れて僻地では傭兵斡旋所へと変容してきている。そんな所では勇者の為ではなく個人の暴力の為に、冒険者ではなく食い詰めた無法者が主役に代わってしまった。いま勇者が安心して助力を頼めるのは中核都市の各神殿か大都市の王立冒険者ギルド位のものである。
     
    「ちょこまかちょこまかと逃げ腐ってからに、乳歯一本ずつへし折るぞ!」
    継接ぎの革鎧に鉄兜を被る岩窟人がカナコの進路をふさぐ様に手を広げ横合いから現れるが、足元に飛びかかる様に飛び出し、その股を潜り抜ける。
    「刃物チラつかせた下品な顔のヒトに追いかけられて逃げ出さない女の子なんていません!」
    前転から立ち上がり、とにかく駆け出す。
    「坊主頭が舐めた口利きやがるとタダじゃおかねえゾ!」
    「坊主じゃあしません、オシャレと衛生を兼ね備えたベリーショートです」
    周りのヒトは助けてくれない。それどころかワザと逃げ道をふさいだりするなど暴漢の手伝いなんかをしている。
    「痩せ雌のクソ餓鬼が、さっさと捕まりやがれ!」
    四人に増えた狩人が獲物に対し理不尽な物言いをする。
     
     このタチガレの街で朝から三度の追剥と一度の人買いに遭遇したカナコは人心の荒廃と勇者の無力に心が折られそうになっていた。世界が自分に優しくないのは短いながらも今までの人生で良く分かっていたが、世界を救う勇者に襲い掛かるヒトがいるとは思ってもいなかった。強がりを言いつつ路地を最高速で駈けるカナコ。三人組の冒険者が怒号を浴びせてくるたびに涙がこみ上げてくる。膝は笑ってるし、喉は奥からひっくり返って飛び出そうだ。
     
    助けてよ、助けてよ、助けてよ!
     
    「はい、ご苦労さん。地獄の一丁目にようこそ」

     
    カナコ十二歳。Lv.3勇者(駆け足)。


     
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